高橋一生さんはいつも想像を超えてきてくれるので、
新しいドラマを見るときに今度はどんなキャラクターを見せてくれるのか、
始まるのが待ち遠しくてたまらないです。
「6秒間の軌跡」もお見事としか言いようのない出来栄えです。
知らず知らずのうちに引き込まれ今まで演じた数々のキャラクターを思い出す隙がないくらい完璧に築きあげています。
一生さんが構築した星太郎は母が家を出て行ってしまった日から30年たった今も花火師の腕以外は、
自分の殻を破れないまま40歳になってしまっていました。
その時の寂しさや父と暮らすと決断した理由を父や周りの人たちに相談できずにいたのです。
しかし、以外な展開で星太郎の心は解き放たれ、
自分の腕を存分に活かして花火師としての挑戦をすることを決断することができました。
このドラマは演劇界の重鎮ともいえる橋爪功さんと2021年に舞台で初共演し、
橋爪さんのドラマを一緒にやりたいとの熱い呼びかけに高橋一生さんが喜んで呼応して実現したものです。
お二人の自由で多彩な俳優としての才能を余すところなく味わうことができる極上のドラマです。
高橋一生 「6秒間の軌跡」 ファンタジーホームドラマ
10話まであるこのドラマですが主人公・望月星太郎の父が1話で亡くなってしまいます。
ところが父は星太郎にしか見えない妄想の幽霊になって登場します。
生きてるときには話せなかった父と星太郎との会話劇は圧巻です。
ドラマはほぼ星太郎が生まれて育った家で繰り広げられますが、
二人の会話の間合いや掛け合いの緩やかさと危急さの程合いがまさに絶妙で、
知らず知らずのうちに引き込まれてしまいました。
9歳の時に両親が離婚し父と暮らしてからこれまで何に興味を持ち小学校時代はどんな子供だったのか、
中学生の時の友達は何人くらいだったのかドラマには出てこない星太郎の歴史が想像できます。
高橋一生さんが構築したであろう背景が演技に厚みをだし、
繊細でもあり大胆でもある色彩豊かなドラマとなって楽しませてくれます。
高橋一生 ファンタジーホームドラマ
本当は母について行きたかった星太郎ですが、
9歳の男の子が自分の小さい意地で決めてしまった父と暮らすという選択は、
30年間ずっと自分自身のわだかまりとして心に抱えてきました。
本当はどうしたいのか迫られる年端もいかない少年の気持ちを想像したら胸が詰まります。
父だけが読んでいた新聞をやめることができず、
花火師の仕事もコロナ過でほとんどなく、家で父と過ごした時のまま時間だけが過ぎていきます。
半年くらい経った時、亡くなったはずの父が突然星太郎の前に現れます。
最初はびっくりしましたがそのうちその姿を探すようになり、
幻影の父との会話が楽しみになってきました。
さらにまた、突然星太郎の前に住み込み希望の「ひかり」が現れます。
彼女は給料は仕事の注文が入ってからで良いという何とも都合のよい従業員です。
そのひかりが食事を作ったり掃除をしたり煙火店のホームページを作ったりしてくれるようになって、
星太郎はまともな日常生活を取り戻していきます。
前述したように橋爪功さんと高橋一生さんの演技力がなければ成立しない、
ホロっとさせられて時々プッと吹き出してしまうこのファンタジーホームドラマを超える作品はこれから出てくるとは思えません。