梅雨に雨を降らせる停滞前線ができるのは
実は世界の屋根と言われているヒマラヤ山脈の存在があるからなのです。
「えっ、あのヒマラヤ山脈と日本の梅雨が関係ある」ってどういうこと?
って思いますよね。
その関係についてこれからわかりやすく説明していきますね。
梅雨はヒマラヤ山脈がなければ起こらない
梅雨の時期には北海道の北東の海上にオホーツク海気団が発達します。
(ちなみに気団というのは停滞性の高気圧によって広い範囲で温度と湿度が一定になった
一つの空気のかたまりの事です。)
これが停滞前線を発生させる一つの気団です。
この気団ができる大きな要因がヒマラヤ山脈にあります。
東西約2400km南北約250kmの広大な山脈で、
世界最高峰のエベレスト山(8848m)を含む8000m以上の山が14あります。
その中に日本列島がすっぽりと収まってしまうほどです。
この長大な壁・ヒマラヤ山脈に、
偏西風という一年中西から東へ高度5千メートルから1万メートルの高さのところを吹いている風がぶつかるのです。
その時に南北に分れた流れがオホーツク海気団を形成します。
偏西風の中でも特に強い流れをジェット気流とよんでおり2つあります。
そのひとつである亜熱帯ジェット気流が春になると吹く位置が北上し
ヒマラヤ山脈があるチベット高原にぶつかり北と南の流れに分かれます。
分れた北の流れはもう一つの寒帯前線ジェット気流とサハリン上空で合流し
さらに分れた南の流れはインド洋や太平洋の湿気をたっぷり含み
カムチャツカ半島上空で合流します。
その時に空気の流れが滞り下降気流が起こり高気圧が発生し
オホーツク海気団が作られます。
冷たくて湿ったオホーツク気団に対して暖かく湿った小笠原気団が、
この時期、南海上に発達します。
小笠原気団は北太平洋気団の一部で小笠原諸島に中心があります。
この2つの気団が長い間、隣り合っているのでその境目に停滞前線ができます。
それで一カ月ほども雨が続きます。
梅雨の季節は地球規模で吹く偏西風によってもたらされる
梅雨をもたらすオホーツク海気団を生む偏西風は、
一体なぜ西から東へ吹くのでしょうか。
それは「コリオリの力」によります。
コリオリの力とは
地球の自転の関係で
北の方へ向かって吹いた風はそのまま、
真北へ吹かないでななめ右へ曲がって吹きます。
そのような風が北緯30度あたりから北緯60度あたりまで地球全体に吹いているので
風がつながって地球の上空を西から東へとふく一つの風の帯になっています。
上から見るとすれば↓こうなります。
偏西風が西から東へ吹きその途中にヒマラヤ山脈があるがゆえに
ヨーロッパやアメリカ、アフリカにはない梅雨が日本にあるのです。
梅雨をもたらすオホーツク海気団の色々な影響
偏西風がヒマラヤ山脈の影響を受けて日本の北東海上に発生させるオホーツク海気団は、
その勢力が強い年には梅雨以外にも北海道、東北地方、関東地方の太平洋側に、
「やませ」という東風を吹かせます。
そういう年は低温と日照不足になり冷害や凶作になる場合があります。
もともと低温に適した品種の稲が栽培されている北海道よりも、
高温に耐えうる品種の稲が栽培されている東北地方のほうが、
稲作への被害が大きいとも言われています。
やませが吹くと東北の太平洋側や関東で気温が上がりにくくなります。
時には、大阪・名古屋と東京との気温差が10度以上になる日もあります。
これを梅雨寒とよんでいます。
日本と同じように中緯度にある地域は乾燥地帯といわれており
主だった砂漠はほぼこの緯度にあります。
しかし、一年間の3分の1の雨が梅雨の時期に降る日本は
世界でも珍しい水の豊富な国として知られています。
梅雨は地球規模の自然現象によって起こる
梅雨の原因は日本の周りだけでなく、
地球全体をとり囲む大きな風の流れや、
風の流れを左右する8000メートル級の山々の存在が
あることがわかりました。
そして、オホーツク海気団によってもたらされる色々な影響を知るときに、
日本の周りだけで起こる事ではなく世界の気象に目を向ける事が大切ですね。